このワダイ、3行で
- 1990年代後半から2000年代の個人ホームページは、入門サイトでHTMLを学び、自分で書いて、FTPという方法で送り、『ジオシティーズ』などの無料スペースやレンタルサーバーに置いて作られていました。
- キリ番や掲示板といった交流の一方で、保存していた接続パスワードが抜かれる被害や、古い管理ソフトを狙った攻撃、運営の終了で消える事情もあり、ブログの登場で「HTMLとFTPの知識」が要らなくなっていきました。
- 今は、当時風の静的なページだけを置ける『Neocities』や、静的サイトを作る『Jekyll』などに形を変えて残り、日本版ジオシティーズの保存ページを見る手段も一部あります。
個人ホームページは、1990年代後半から2000年代に、個人が自分で作ってネット上に置いていたウェブサイトのことです。「ホームページ」という言葉は、ブラウザを開いた時に最初に出るページを指すこともありますが、このページではサイト全体の意味で使います。
2026年10月、PHP(ウェブサイトの裏側で動くプログラムの言語)の脆弱性、つまり弱点をめぐる騒ぎがありました(PHP脆弱性『php2shell』で何が? 首相のXと止まった国内サービスを整理)。同じころXでは、PHPの話に絡めて、メモ帳でタグを打ち、ジオシティーズにホームページを置いていた、という回顧の投稿が見られました(編集部が本文を確認できた個人の投稿の例:投稿1、投稿2)。
そこで、このページでは「個人ホームページは、どうやって作られ、何があったのか。そして今、どこに残っているのか」を、確認できた資料の範囲で年表にして整理します(2026年10月26日時点)。
どうやって作られた? 学ぶ、書く、送る、置く
学ぶ──『とほほのWWW入門』
作り方を教えてくれたのが、個人が公開していた入門サイトです。代表的なのが『とほほのWWW入門』で、作者の杜甫々氏が2024年4月16日付の講演資料に開設の日付を書いています。1996年9月10日に「とほほのHTML入門」を開設し、同年10月25日に「WWW入門」に改名しました。目次には、JavaScript入門(1996年)、CSS入門(1997年)、色入門(1997年)、Cookie入門(1997年)、著作権入門(1998年)も並んでいます(作者の講演資料)。公式サイトは今も続いていて、表記は「Copyright (C) 1996-2026」です(とほほのWWW入門)。
HTMLは、ページの文字や画像をどう並べるかを、「タグ」という目印で書いていく言葉です。その決まりはW3C(ウェブの標準を決めている団体)が出していて、1997年1月14日にHTML 3.2、1999年12月24日にHTML 4.01が勧告(正式な推奨)されました(HTML 3.2、HTML 4.01)。
書く──専用ソフトと、メモ帳
書く道具には、専用ソフトがありました。『ホームページ・ビルダー』は日本IBMの大和研究所が開発したソフトで、初版は1995年とする報道(INTERNET Watch)と、1996年とする報道(マイナビニュース)があり、年は割れています。
専用ソフトを使わず、Windowsに入っている「メモ帳」のような文字だけのエディタ(文章を打つソフト)でタグを直接書いた、という話は、今の回顧でよく語られています。ただ、当時の資料でそれを確かめたわけではないので、この点は「今、そう語られている」にとどめておきます。
送る──FTPと『FFFTP』
書いたページは、自分のパソコンの中にあるだけでは誰も見られません。サーバー(ネット上でページを預かるコンピュータ)へ送る必要があります。この送り方が「FTP」で、日本語で使えるFTPソフトとして広く使われたのが『FFFTP』です。窓の杜によると、1997年ごろに公開され、自分のパソコンの中身とサーバーの中身を左右に並べて見られるのが特徴でした。作者は曽田純氏で、「オンラインソフトウェア大賞2002」で大賞を受けています(窓の杜、2011年9月1日)。
置く──ジオシティーズ、レンタルサーバー、プロバイダの無料スペース
置き場所はいくつもありました。
- 『ジオシティーズ』:1994年にアメリカで生まれたサービスで、日本では1997年7月にジオシティーズ株式会社が設立され(ソフトバンクが60%、米国のジオシティーズ社が40%を出資)、同年9月にサービスが始まりました(ソフトバンクの1998年8月12日の発表)。この発表の時点で、日本の会員は14万人を超え、毎月1万人以上が新しく登録していたそうです。のちにYahoo! JAPANと一緒になって『Yahoo!ジオシティーズ』になり、2008年7月にヤフーは「ホームページの開設数が400万件を突破した」と発表しました(無料版の容量は50MB。INTERNET Watch、2008年7月30日)。なお、14万人は会員の数で、400万件はホームページの開設数なので、単位が違います。比べないでください。
- レンタルサーバー:さくらインターネットは1996年12月に、共用のレンタルサーバーを『さくらウェブ』の名前で始めています(同社の沿革)。
- プロバイダの無料スペース:ニフティの『@homepage』は1999年に始まった、接続会員向けの無料のホームページサービスで、ピークの2003年ごろには約34万アカウントがあったと報じられています(INTERNET Watch、2016年11月11日)。
つまり、ジオシティーズだけが日本の個人サイトの置き場だったわけではありません。ジオシティーズは、そのうちいちばん名前が思い出されやすいサービス、というくらいに考えておくのが正確です。
回線の事情もありました。1997年10月の報道では、夜11時から朝8時まで定額でつなぎ放題になる『テレホーダイ3600』(月額3,600円、隣接する20kmまでの区域)が、すでにある料金プランとして紹介されています(INTERNET Watch、1997年10月9日。始まった時期は確認できていません)。テレホーダイは2024年1月1日に、通話料割引サービスとして終了しました(NTT東日本、2022年12月8日の発表(別紙PDF))。
個人サイトの風景──懐かしむ側から見ると
2012年9月、当時の個人サイトを再現したページがTwitterを中心に話題になった、とINTERNET Watchが報じました。入口ページ(サイトの玄関になる最初のページ)、キリ番やゾロ目のカウンター、「踏み逃げ禁止」の表示、CGI(サーバー側で動かす小さなプログラム)で動かす掲示板(BBS)、ネットマナーを説明するサイトへのリンクなどが並んでいたそうです。記事は、同じようなサイトを作って「相互リンク」を申し込むのも面白い、と提案していました(INTERNET Watch、2012年9月13日)。
「キリ番」は、ニコニコ大百科で「キリの良い番号」の略とされ、個人サイトではアクセスカウンター(訪れた人の数を数えて表示する部品)の番号を指して使われました(ニコニコ大百科。辞書の記述です)。「相互リンク」は、お互いのサイトに相手へのリンクを貼り合うことを指します。2025年4月1日のエイプリルフールには、イラストレーターが2000年ごろの個人サイトを思わせるページを公開しました。カウンター、キリ番リクエストの案内、「直リン禁止」「相互募集」の表示、お絵かき掲示板とBBSが並び、「思い出が蘇ってくる」「ノスタルジック過ぎる」といった声が紹介されたと、Inside Gamesが報じています。
バナー(サイトの宣伝用の小さな画像)も、この文化の一部でした。とほほの作者の回想では、当時は88×31ドットのバナーばかりで、原色を使うのはけしからんという風潮があった、とのことです(上の講演資料)。掲示板も、とほほのラウンジ(1997年)、あめぞう掲示板(1998年)、2ちゃんねる(1999年)と、作者が「歴史」として並べています。
冷静に見ると──当時もあった壁と、事故と、終わり
一方で、昔のままが良かったと言い切れない事情も、同じくらいありました。
作るのに知識が要った
INTERNET Watchの2017年2月24日の記事は、ブログが出てくる前は、個人がホームページを作るにはHTMLやFTPの知識が必要だったが、ブログは「ログインしてフォームに本文を入れるだけ」で公開できるので、それを過去のものにした、と書いています(INTERNET Watch)。同じ記事によると、『はてなダイアリー』が2003年初頭、『ココログ』『ライブドアブログ』『Seesaa』が2003年末、『アメーバブログ』が2004年9月、『FC2ブログ』が2004年10月(ベータ版)に始まりました。「ブログ元年」がいつかは、書き手も「異論歓迎」としていて決まっていないため、このページでは「2003年末から2004年に各社が参入した」と書きます。
壁が下がったことで、書く人は増えたとみられます。一方で、自分のドメイン(サイトの住所)や、自分で決めたレイアウトを持つ人がどう変わったかを示すデータは、確認できませんでした。
便利な道具が、事故の入口にもなった
窓の杜によると、FFFTPは2010年に、パソコンのウイルス『Gumblar』によって、ソフトに保存していたFTPの接続パスワードが抜き取られる被害に遭いました。告知の約1週間後に、対策版のv1.97が出ています(窓の杜、2011年9月1日)。ページを書き換える鍵になる情報が盗まれると、ページの形式が何であっても、改ざんされる危険があるということです。
また、IPAは2014年6月19日に、脆弱性の管理ができていないウェブサイトの閉鎖を検討するよう呼びかけました。企業だけでなく個人のホームページ作成者も対象で、古い管理ソフト(『Web Diary Professional』と『Movable Type』)を狙った攻撃が背景にありました(ScanNetSecurity、2014年6月20日)。
無料の置き場は、運営の都合で終わる
『@homepage』は2016年11月10日に終了し、終了の時点で約12万のホームページが見られなくなりました。データの移行とバックアップの期限は2016年12月12日でした(INTERNET Watch、上と同じ記事)。ジオシティーズ日本版は、2019年3月31日にホームページの表示が終わり、2020年3月31日がFTPでデータを取り出せる最後の日で、翌日以降は全データが削除されました(Impress Watch、2018年10月1日、窓の杜、2020年3月31日)。終わり方の詳しい経緯は、『ジオシティーズ』や『Flash』はなぜ見られなくなった? ネットは一生残るのかを整理にまとめています。
「静的なHTMLなら安全」は、本当なのか
ここは事実ではなく、推測の話です。PHPのようなサーバー側のプログラムが動かない静的HTML(書いたとおりに表示されるだけのページ)なら、その種の弱点の入口が無い、という見方があります。この見方は成り立つように見えます。ただし、その技術的な裏付けを、公的な資料で確かめたわけではありません。
さらに、先に書いた事例のとおり、静的なページでも、接続パスワードが盗まれれば改ざんされます。置き場所の運営が終われば、ページごと消えます。つまり「PHPの弱点とは関係しにくい」ことと、「何があっても安全」は別の話です。どちらの見方にも根拠があり、混ぜずに受け止めるのがよさそうです。
今、どこに残っているか
- 『Neocities』:Kyle Drake氏が2013年に始めた無料のホスティング(サイトを置く場所を貸すサービス)です。作者は2013年5月23日に「もうひとつGeoCitiesを作りたい。無料、静的HTMLのみ、10MB上限」と投稿し、6月28日付の公式ブログで、開始から1週間で1,600サイト以上になったと書いています(Neocities公式ブログ)。公式サイトは「個人の、静的HTMLのサイト」を置く場所と説明しています(Neocities)。
- 静的サイトジェネレーター:文章とテンプレートから、データベースを使わない静的なページ一式を作る道具です。代表的な『Jekyll』は、Tom Preston-Werner氏が2008年11月に公開を告知したツールで(作者のブログ記事は11月17日付)、『GitHub Pages』が組み込みで対応し、公式文書も使うことを勧めています(作者のブログ、GitHub Docs)。自分で書いて静的なページを置く、という形が、道具を変えて続いていると言えます。
- 『FFFTP』:作者が2011年8月に開発終了を宣言したあと、有志が10月にv1.98を公開し、2018年4月にはv3.0が公開されています(窓の杜、2011年10月13日、窓の杜、2018年、GitHub)。v3.0のGitHubでの公開は4月2日で、窓の杜の記事は本文の日付とソフト情報欄の日付が食い違っています。
- 保存されたページ:ジオシティーズ日本版の閉鎖後に、『Internet Archive』(ネット上のページを保存している非営利の図書館)に保存されたページへ自動で飛ぶ『Chrome』の拡張機能『Goodbye geocities.jp』が、2019年5月に公開されました。記事は「すべてのページが見られるとは述べていない」と注記しています(INTERNET Watch、2019年5月9日)。
ブログやSNSが主役になった今も、「自分で作って、自分の場所に置く」やり方は、静的サイトという形で選べます。その一方で、どこに置くかを選ぶ時の注意は、ジオシティーズや@homepageの時代と変わりません。
同じ頃のネットの別の遊び場については、『みんながいなかったから楽しかった』おもしろフラッシュ時代のインターネット論が、人が少なかったころの空気を書いています。
年表で見ると

| 年・日付 | できごと | 確かさ |
|---|---|---|
| 1995〜96年 | 『ホームページ・ビルダー』初版(1995年とする報道と1996年とする報道がある) | 報道(割れている) |
| 1996年9月10日 | 『とほほのHTML入門』開設。10月25日に『WWW入門』へ改名 | 作者の講演資料(一次) |
| 1996年12月 | さくらインターネットが共用レンタルサーバー『さくらウェブ』を開始 | 同社の沿革(一次) |
| 1997年1月14日 | W3CがHTML 3.2を勧告 | W3C(一次) |
| 1997年ごろ | 『FFFTP』が初公開 | 報道(窓の杜) |
| 1997年9月 | 『ジオシティーズ』日本版のサービス開始(法人設立は7月) | ソフトバンクの発表(一次) |
| 1997年10月9日 | 『テレホーダイ3600』(夜11時〜朝8時、月額3,600円)が報道で紹介されている(開始年は未確認) | 報道(INTERNET Watch) |
| 1998年 | とほほの目次に「著作権入門」 | 作者の講演資料(一次) |
| 1998年8月 | ジオシティーズ日本の会員が14万人超(会員数) | ソフトバンクの発表(一次) |
| 1999年 | ニフティ『@homepage』開始 | 報道(INTERNET Watch) |
| 1999年12月24日 | W3CがHTML 4.01を勧告 | W3C(一次) |
| 2003年末〜2004年 | 『ココログ』『ライブドアブログ』『アメーバブログ』『FC2ブログ』などが相次いで開始 | 報道(INTERNET Watch) |
| 2008年7月 | ジオシティーズのホームページ開設数が400万件を突破と発表(開設数) | 報道(INTERNET Watch) |
| 2008年11月 | 『Jekyll』の公開告知(作者のブログは11月17日付) | 作者のブログ(一次) |
| 2010年 | 『FFFTP』の保存パスワードが『Gumblar』で抜かれる被害。対策版v1.97 | 報道(窓の杜) |
| 2013年6月 | 『Neocities』開始(公式ブログは6月28日付で「開始から1週間」と書く) | Neocities公式ブログ(一次) |
| 2014年6月19日 | IPAが脆弱性管理のできていないウェブの閉鎖検討を呼びかけ | 報道(ScanNetSecurity) |
| 2016年11月10日 | 『@homepage』終了。約12万のホームページが閲覧不可に | 報道(INTERNET Watch) |
| 2019年3月31日 | ジオシティーズ日本版のホームページ表示が終了 | 報道(Impress Watch) |
| 2020年3月31日 | FTPでの取り出し期限。翌日以降は全データ削除 | 報道(窓の杜) |
| 2024年1月1日 | テレホーダイが通話料割引サービスとして終了 | NTT東日本(一次) |
| 2026年10月 | PHPの脆弱性騒ぎと同じころ、Xで個人ホームページの回顧の投稿が見られる | X(編集部が本文を確認した2件) |
まだ分かっていないこと
- 『ホームページ・ビルダー』の初版が1995年か1996年か(報道で割れています)
- 『テレホーダイ3600』が始まった時期
- 日本のジオシティーズが、『Internet Archive』などにどこまで保存されているか
- 「静的HTMLが安全」という見方の、技術的な裏付けの強さ
主な出典
- とほほのWWW入門 作者講演資料(2024年4月16日)
- ソフトバンク 発表(1998年8月12日)
- さくらインターネット 沿革
- W3C HTML 3.2、W3C HTML 4.01
- NTT東日本(2022年12月8日、別紙PDF)
- Neocities公式ブログ、Neocities公式サイト、Jekyll作者のブログ、GitHub Docs、FFFTP GitHub
- 報道:窓の杜(2011年9月1日)、窓の杜(2011年10月13日)、窓の杜(2018年)、窓の杜(2020年3月31日)、Impress Watch(2018年10月1日)、INTERNET Watch(2016年11月11日)、INTERNET Watch(2017年2月24日)、INTERNET Watch(2012年9月13日)、Inside Games(2025年4月1日)、ScanNetSecurity(2014年6月20日)
- 辞書:ニコニコ大百科「キリ番」



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