『マリオ』の宮本茂さんが文化勲章。「ゲーム関係者で初」の意味と文化功労者との違い

マリオのCGと「MARIO PORTAL マリオポータル」のロゴ。任天堂公式『マリオポータル』の画像 ニュース
出典:任天堂『マリオポータル』 ©Nintendo
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このワダイ、3行で

  • 任天堂の宮本茂さんが2026年度の文化勲章に選ばれたと10月23日に報じられ、ゲームの作り手としては初めての受章と伝えられています。
  • 文化勲章は原則として前年度までの文化功労者から選ばれる仕組みで、宮本さんは2019年度にゲーム業界から初めて文化功労者に選ばれたと報じられていました。
  • ゲームが国の制度の中で「文化」の側に数えられる流れは、1997年度に始まった文化庁メディア芸術祭などで積み重なってきました。

『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』を作った任天堂の宮本茂さんが、文化勲章を受けることになりました。文化勲章は、学問や芸術などで、日本の文化に特に大きな働きをした人に国が贈る勲章です。電ファミニコゲーマーは、過去の受章者として日本画家の横山大観や物理学者の湯川秀樹などを挙げています。

このページでは、何が発表されたのか、よく似た「文化功労者」とはどう違うのか、報道で使われている「ゲーム関係者で初」とは何が初めてなのかを順番に整理します。後半では、ゲームが国から「文化」として扱われてきた歩みを年表にしました。情報は2026年10月28日時点のものです。

何が発表された? 会見から11月3日の親授式まで

2026年10月23日、政府が今年度の文化勲章を受ける8人を発表したと報じられています。NHKは「『スーパーマリオブラザーズ』を手がけたゲームプロデューサーの宮本茂さんや、ことしのノーベル化学賞に選ばれた硤合憲三さんなど8人が選ばれました」と伝えています。GameBusiness.jpによると、ほかに照明デザイナーの石井幹子さん、建築家の伊東豊雄さん、作曲家の都倉俊一さんらが選ばれ、勲章を手渡す親授式は11月3日に皇居で行われる予定です。

  • 10月22日:京都の任天堂本社で、宮本さんの受章についての会見
  • 10月23日:今年度の文化勲章の受章者8人が発表される
  • 11月3日(文化の日):皇居で親授式(予定と報じられています)

宮本さんは、任天堂の役員一覧では「代表取締役 フェロー」です。1977年に任天堂に入り、『ドンキーコング』『スーパーマリオ』『ゼルダの伝説』などを手がけてきました。

前日の会見の様子は、電ファミニコゲーマーが質疑応答ごと載せています。宮本さんは開口一番「照れくさい」と笑い、「ゲームというのはひとりで作っているものではなく、大勢の人たちと一緒に作ってきた結果。それを代表するという気持ちで受ける」と話したそうです。入社してすぐゲームの仕事に関わったので「じつはもう50年になるんです」とも語っています。

文化勲章と文化功労者はどう違う?

ニュースでは「文化勲章」と「文化功労者」が並んで出てくるので、まぎらわしく感じるかもしれません。どちらも国が文化の分野で功績のあった人をたたえる制度ですが、中身が違います。文化庁の説明をもとに並べると、こうなります。

文化勲章 文化功労者
何をするもの 文化の発達に関し勲績卓絶な(とびぬけて大きな功績のある)人に勲章を授ける 文化の向上発達に特に功績のあった人に年金を支給して、たたえる
できた年度 1937年度(昭和12年度) 1951年度(昭和26年度)
2つの関係 文化勲章を受ける人は、原則として前年度までの文化功労者の中から選ばれます

つまり、文化功労者に選ばれた人の中から、さらに文化勲章を受ける人が選ばれる、という順番です。ここが、次の「ゲーム関係者で初」の話につながります。

「ゲーム関係者で初」は、何が初めてなのか

先にお断りすると、この「初」は報道各社の言い方で、政府の公式な発表文で確かめられたものではありません。意味は、ゲームの分野から文化勲章を受ける人が出たのは初めて、ということです。

宮本さんは2019年度に文化功労者に選ばれています。このときGameBusiness.jpは「ゲーム業界からは初」と報じました。今回の文化勲章についても、電ファミニコゲーマーは「ゲーム関係者としては初」、ファミ通.comは「ゲームクリエイターとしては初めての受章」と伝えています。

文化勲章は原則として文化功労者から選ばれるので、ゲームの作り手で最初の文化功労者だった宮本さんが、文化勲章でも最初になった、という流れです(この順番の整理は、文化庁の説明と報道を合わせた編集部のものです)。2019年に「まず文化功労者」、7年後に「文化勲章」と、2段階で道が開いたことになります。

おもしろいのが、宮本さん自身の「ゲームと文化」についての言葉です。2006年、フランスで勲章を受けたころの海外インタビューの日本語訳(インサイド)では、ゲームは「既存の文化とは比べられない存在」で、既にある芸術や文化に対抗するものになるのは難しい、と話していました。そのうえで、遊ぶ人がゲームでクリエイティブになるという面から語るなら「既に文化という域に達していると思います」とも答えています。なお、このフランスの勲章の名前は資料によって違い、Game Developerとインサイドは芸術文化勲章(芸術文芸勲章)、文化庁メディア芸術祭の紹介ではレジオン・ドヌール勲章としています。フランス側の一次資料は確認できていないため、このページでは勲章名を決めずに書いています。

そして20年後の会見では、「ゲームが文化になったというのは、ゲームが当たり前になったということでしょうね」と話しました。編集部には、どちらの言葉も、ゲームを立派な芸術に見せることより、遊ぶ人の暮らしの中にあることを大事にしているように読めます。

SNSでは、受章を祝う投稿や「ゲームが文化になった」と受け止める投稿が見られました。反対の声は目立っていませんが、こちらでXの全体を集計できているわけではないので、その点は割り引いて読んでください。

ゲームが「文化」と認められてきた歩み(年表)

文化勲章はいきなり出てきたわけではありません。国の制度の中でゲームが「文化」の側に数えられるようになった流れと、宮本さんの受賞を、確かめられたものだけ並べました。

年 出来事 確認したところ
1937年度 文化勲章ができる 文化庁
1951年度 文化功労者の制度ができる 文化庁
1977年 宮本さんが任天堂に入社 文化庁メディア芸術祭のプロフィール、会見での本人の発言
1988年10月23日 『スーパーマリオブラザーズ3』発売 任天堂公式
1997年度 文化庁メディア芸術祭が始まる メディア芸術祭公式
1998年度(第2回) 『ゼルダの伝説 時のオカリナ』がデジタルアート(インタラクティブ)部門の大賞 メディア芸術祭公式
2001年12月 文化芸術振興基本法ができ、第9条で「メディア芸術」の振興を定める e-Gov法令検索、メディア芸術祭公式
2006年3月 宮本さんがフランスの勲章(シュヴァリエ)を受けると報じられる Game Developer、インサイド(報道)
2009年度(第13回) メディア芸術祭の功労賞 メディア芸術祭公式
2019年度 文化功労者に。ゲーム業界から初と報じられる GameBusiness.jp、電ファミニコゲーマー(報道)
2022年度 文化庁メディア芸術祭が終わる メディア芸術祭公式
2026年10月23日 文化勲章の受章者に。ゲーム関係者で初と報じられる NHK、電ファミニコゲーマー、ファミ通.com(報道)

大きな節目は、1997年度に始まった文化庁メディア芸術祭です。ゲームやアニメ、マンガ、デジタルアートの優れた作品をたたえる、文化庁の名前のついたフェスティバルで、のちにアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門になりました。宮本さんは第2回で『ゼルダの伝説 時のオカリナ』が大賞、第5回で『ピクミン』、第12回で『Wii Fit』が優秀賞を受け、第13回では本人に功労賞が贈られています(メディア芸術祭の宮本茂さんのページ)。

功労賞の贈賞理由には、こんな一節があります。「氏は、自分のつくるものは作品ではなく商品だと語り、自身の作家性を否定している。しかし、どれだけ多くの人が宮本氏の作品でビデオゲームの世界を知り、楽しんだことか」。作り手は「商品」と言い、選ぶ側は「文化」としてたたえる。そのずれ自体が、ゲームと文化の関係をよく表しています。

法律の面では、2001年にできた法律(今の名前は文化芸術基本法)の第9条が、「映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術」を「メディア芸術」と呼び、国がその振興を図るとしています。条文に「ゲーム」という言葉そのものはありませんが、メディア芸術祭はゲームもこの「メディア芸術」の中で扱ってきました。

そのメディア芸術祭は、2022年度(令和4年度)で終わりました。公式サイトは、今後は「人材育成やアーカイブ等の取組」を進めるとしています。たたえる場が一つ終わり、今回はそれとは別の、国の勲章という形で、ゲームの作り手が評価されたことになります。

同じ10月23日は『スーパーマリオブラザーズ3』の38周年

受章が発表された10月23日は、ファミコン用ソフト『スーパーマリオブラザーズ3』の発売日でもありました。任天堂公式のマリオヒストリーによると、発売日は1988年10月23日です。マップでステージを選べるようになり、変身の種類も増えたシリーズ3作目で、ゲームメディアも「今日は何の日」として取り上げていました。

SNSでは、38周年の日と受章の発表が重なったことを「いいタイミング」と喜ぶ投稿もありました。マリオで育った人にとっては、思い出のゲームの誕生日と、作った人のニュースが同じ日に並んだ形です。

まだ分かっていないこと

  • 政府の公式な発表文と名簿。2026年10月28日時点で、文部科学省・文化庁のサイトに今年度の受章者のページは見当たりませんでした(前年度は11月3日付で文部科学省に載っています)。公式の発表に「ゲーム関係者で初」という言い方があるかも、まだ確かめられていません
  • 任天堂の公式なお知らせやコメントが出ているか

公式の発表が出たら、このページに書き足します。

関連ワダイ

ゲームが「文化」とたたえられても、遊べる形で残るかどうかは別の問題です。『Flash』で作られたゲームやアニメが動かなくなった話と、それを保存する取り組みは、『ジオシティーズ』や『Flash』はなぜ見られなくなった?で整理しています。メディア芸術祭が終わったあとの柱に「アーカイブ」が挙がっていることと、つながる話です。

国がゲームやマンガをどう扱うかには、たたえる側だけでなく、守るルールの側もあります。文化庁が2026年に二次創作と著作権について説明した話やファン翻訳の歴史は、『鉄拳6』非公式PC版から整理する、海賊版とファン翻訳の歴史と日本の法律にまとめています。

主な出典

公式・公的機関

報道

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