「車社会の地域は、自分たちにしか使えない施設を作っている」──Xに投稿されたある一言が、日本の地方観光が抱える構造問題を正確に言語化していました。
一つの投稿が言語化した「モヤモヤ」
投稿したのはしーさいど(@SeasideExp)さん。この発言がきっかけになりました。
車社会の「各地から人を集めようという施設を、車でしか行けない所に作る」の、自分たちしか使えないじゃんって毎回思うんだけど、何なんだろう・・・
— しーさいど (@SeasideExp) 2026年2月26日
続けて「バスの運転手をかき集めてシャトルバスを走らせる時代も終わってしまうし、他所から人を呼びたいなら駅にベタ付けしないとダメだ」「物流施設か工場のつもりで作っているのかも」とも。Togetterに「免許がなければ客じゃない」というタイトルでまとめられ、拡散しました。
「弾かれる側」は実は多数派になっている
この投稿に共感したのは、大きく3つの層です。
- 車を持てない・持たない都市生活者:「聖地巡礼に行きたいのにバスが1日3本しかない」「免許を返納した高齢の親を連れて行けない」
- インバウンド観光客:訪日外国人の大半は日本国内で車を運転できない。2024年に訪日外国人は過去最多の3,688万人を記録したが、アクセス困難な地方観光地に恩恵が届きにくい構造がある
- 免許のない若年層:2020年代に入って若者の免許取得率は低下傾向。地方出身の若者でも「実家に帰ると移動手段がない」という声が増えている
「弾かれている側」は、若者・高齢者・外国人──つまり今後の日本の観光を支えるはずの三層です。
地方からの反論──「そんな単純な話じゃない」
一方で、地方在住者や行政関係者からは現実論も出ました。
- 「バスが採算に合わないのは構造問題。施設側だけの話じゃない」
- 「人口1万人以下の町でバスを走らせ続けるのは自治体でも限界」
- 「駅前の用地取得コストを考えると、現実的でない」
- 「車で来るのが当たり前の地域では、駐車場の広さこそが集客力」
どちらも正しい。これがこの問題の厄介なところです。施設側の判断は地域の論理として合理的だが、「各地から人を集めたい」という目標と矛盾する。
「工夫でできた」事例も出てきた
絶望的な話ばかりではありません。Togetterのコメント欄や各地の事例には、アクセス問題を解決した成功例も出ています。
- 予約制乗り合いタクシーを導入して来訪者数を3倍にした道の駅
- 地元NPOが運営するコミュニティバスで観光客を取り込んだ温泉地
- 観光シーズン限定で近隣駅から無料シャトルバスを運行する施設
- サイクルポートを設置して電動自転車レンタルと組み合わせたケース
「全部できない」ではなく「できる工夫から始める」視点が、次のフェーズには必要です。
アニメ・ゲームの「聖地巡礼」が問題を可視化した
この議論が2020年代に入って急に増えた背景のひとつに、アニメ・ゲームの聖地巡礼ブームがあります。コンテンツとのコラボで「行きたい場所」が急増しましたが、地方の聖地は車前提のアクセスであることが多い。
免許を持たない10〜20代の若者が「行けない」と諦めるたびに、地域は潜在的な観光消費を逃しています。
「誰でも来られる」が次の集客戦略になる
運転免許保有者の減少・高齢化・インバウンド増加という三つのトレンドは、今後も続きます。「車前提のアクセス」は、地方観光施設にとってじわじわと効いてくる長期的なリスクです。
逆に言えば、アクセス問題を解決した施設は、今まで来られなかった層をそのまま新規顧客にできる。「免許がなければ客じゃない」を「免許がなくても来られる」に変えることが、次の地方観光の競争軸になるかもしれません。



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