このワダイ、3行で
- ANAホールディングスは2026年10月29日、AIRDOとソラシドエアの親会社を完全子会社にする「基本合意」を結んだと発表しました。
- 決まったのは合意を結んだことと予定の日程までで、株式の交換比率や、ブランドをANAに統合するかどうかは、まだ決まっていません。
- AIRDOは1996年に北海道国際航空として、ソラシドエアは1997年にパンアジア航空として生まれた新規航空会社で、どちらも経営の立て直しでANAと組んだ歴史があります。
ANAホールディングス(ANAの親会社)が、AIRDO(エア・ドゥ)とソラシドエアの2社をまとめる会社を、100%子会社にする方向で合意しました。ただしまだ「基本合意」の段階で、正式な契約ではありません。このページでは、2026年10月29日時点で公式発表と報道から分かることと、2社がどんな航空会社だったのかを整理します。
登場する言葉を先に説明しておきます。「持株会社」は、いくつかの会社の株を持って、まとめて管理する会社のことです。AIRDOとソラシドエアの上には「リージョナルプラスウイングス」(以下RPW)という持株会社があります。「完全子会社」は、株を100%持たれて親会社の一部になる会社のこと。「株式交換」は、RPWの株主が持っている株を、ANAホールディングスの株と取りかえる方法です。
ANAの発表で、何が決まった? 日程を並べます
発表したのはANAホールディングス(公式発表)です。RPWを完全子会社にする株式交換を予定していて、そのための「基本合意書」を結んだ、という内容です。基本合意書は、本契約の前に「こういう方向で進めよう」と約束する書類です。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2026年10月22日 | ANAが2社の持株会社への追加出資や子会社化を検討していると報じられる(北海道新聞の見出しで確認。本文は会員限定) |
| 2026年10月29日 | ANAホールディングスが基本合意書の締結を発表 |
| 2026年12月下旬(予定) | 最終契約(本契約)の締結 |
| 2027年2月下旬(予定) | RPWの臨時株主総会で株式交換を承認してもらう |
| 2027年4月1日(予定) | 株式交換の効力が発生。完全子会社になる |
乗りものニュースによると、ANAホールディングスの芝田浩二社長は、企業結合審査(会社どうしが一緒になって競争が弱まらないかを、国が確かめる手続き)の承認を前提に、2027年4月1日に手続きを終える予定だと説明しました。つまり、4月1日は「審査が通れば」の日付です。
決まったことと、まだ決まっていないこと
ここが一番まちがえやすいところです。公式発表を読むと、完全子会社化はまだ確定していません。公式発表は、この合意が、独占交渉などの一部を除いて「法的拘束力がない」(約束として守る義務がない)と書いています。さらに、「現時点で最終契約の締結及び株式交換の実施が確定したものではありません」とも書いています。
| 項目 | いまの状態(2026年10月29日時点) |
|---|---|
| 基本合意書の締結 | 決まった(10月29日) |
| 完全子会社化そのもの | 予定。最終契約と株主総会の承認、審査などが前提 |
| 株式の交換比率 | 未定。最終契約までに両社で協議して決める |
| AIRDOとソラシドエアのブランド | 当面は維持 |
| ANAブランドへの統合 | 「視野に検討」の段階。決まっていない |
| 人員・路線の変更 | 公式発表には具体的な記述なし。読売新聞は「現時点で人員削減や地方路線の廃止・減便の予定はない」と伝えている |
ANAホールディングスが今のRPW株をどれくらい持っているかは、TRAICYによると普通株式の15.32%です(Aviation Wireは2026年3月31日時点の数字としています)。これを100%にします。ほかに、日本政策投資銀行(政府系の銀行)が筆頭株主で、宮崎交通、双日、北洋銀行、石屋製菓、楽天グループなども株主に名前が挙がっています(TRAICY)。
なぜ、いまこのタイミング?
公式発表が挙げている理由は2つあります。ひとつは、国内線を取り巻く環境の変化です。コロナ禍のあと、人口の減少やビジネス出張の減少で需要が落ち、燃料費や人件費は上がり、環境やデジタル化への投資も必要になっています。読売新聞は、国土交通省のまとめとして、国内の主要航空会社6社が2025年3月期は公的支援を除くと営業赤字だったと伝えています。
もうひとつは、ルールが変わったことです。公式発表によると、2026年5月に、大手航空会社が中堅の航空会社に出資することへの規制がなくなりました。大手と中堅の会社が組みやすくなったタイミングでの合意、ということになります。
狙いについて、Aviation Wireは、国内線の収益力を取り戻して地域のネットワークを続けられるようにすることだと伝えています。最初は事業計画、レベニューマネジメント(空席や運賃をどう売るかを管理する仕事)、調達(機材や燃料などの買い付け)の3つをまとめ、2027年度の下期からその効果を出すことを目指すとされています。読売新聞は、機材を一括で買うことや、空港の施設の機能をまとめることを挙げています。
北海道と九州で生まれた2社は、どんな航空会社?
AIRDOは北海道と本州を、ソラシドエアは九州・沖縄と東京などを結ぶ会社です。読売新聞によると、機材はAIRDOが12機、ソラシドエアが14機です。この2社に共通するのは、どちらも1990年代に生まれた「新規航空会社」だったことです。

AIRDO(旧・北海道国際航空)
AIRDOは1996年11月に「北海道国際航空」として設立されました。Aviation Wireは、国の規制緩和に伴って生まれた新規航空会社の1社だったと伝えています。運航を始めたのは1998年12月20日で、東京と札幌を結ぶ路線を1日3往復から始めています。会社自身が国土交通省の審議会に出した2006年の資料には、「『北海道の翼』として地域経済の発展に貢献すること」を創業の理念にした、と書かれています。
その資料は、就航の当初は高い搭乗率だったものの、大手航空会社との価格競争で次第に苦しくなったと説明しています。2002年6月には民事再生法の適用を申請しました(会社を立て直すための裁判所の手続きです)。立て直しはANAとの業務提携を軸に進み、2003年2月にはANAと札幌線で共同運航(同じ便をそれぞれの会社の便名で売る仕組み)を始めました。再生計画は2005年に、予定より1年早く達成されたと、同じ資料は伝えています。「AIR DO」という愛称は、2012年10月に正式な社名にもなりました(Aviation Wire)。
ソラシドエア(旧・スカイネットアジア航空)
ソラシドエアは1997年7月に、福岡で「パンアジア航空」として設立されました。1999年8月に「スカイネットアジア航空」へ社名を変え、2000年9月に本社を宮崎へ移しています。宮崎と東京を結ぶ路線の就航は2002年8月で、2003年に熊本、2005年に長崎が加わりました(会社が国土交通省の審議会に出した2006年の資料)。
ここも苦しい時期がありました。同じ資料によると、2004年6月に、企業の立て直しを支える国の機関だった産業再生機構が支援を決め、2005年にはANAと業務提携、2006年4月にANAとの共同運航が始まっています。名前は、2011年に「ソラシドエア」という新しいブランドを導入し、2015年12月1日に社名もブランド名にそろえました(ソラシドエアの公式発表)。
年を並べると、似た歩みが見えてきます。
| AIRDO | ソラシドエア | |
|---|---|---|
| 設立 | 1996年11月(北海道国際航空) | 1997年7月(パンアジア航空) |
| 運航開始 | 1998年12月(東京=札幌) | 2002年8月(宮崎=羽田) |
| 経営の立て直し | 2002年6月 民事再生法の適用を申請 | 2004年6月 産業再生機構が支援を決定 |
| ANAとの結びつき | 2003年2月 共同運航を開始 | 2005年に業務提携、2006年4月 共同運航を開始 |
| 社名とブランド | 2012年10月 愛称の「AIR DO」を社名に | 2011年 ブランド導入、2015年12月 社名をそろえる |
公式発表も、2社がこれまで「資本関係やコードシェア等を通じて」ANAと協力関係を築いてきたと書いています。今回の合意は、その関係が資本の面でも一段進む動きです。2021年5月には、2社が共同の持株会社をつくると発表し、2022年10月にRPWができました。この時の発表(乗りものニュースが伝えたもの)では、設立後もAIRDOは「北海道の翼」、ソラシドエアは「九州・沖縄の翼」として、それぞれ許可とブランドを持ち続けるとされていました。
ブランドと路線について、発表と報道では何と言っている?
ここは、公式発表と報道から分かる範囲で書きます。北海道や宮崎の知事など、自治体の首長のコメントは、調べた範囲では見つけられませんでした。
ブランドについて、公式発表は「当面は、AIRDO及びソラシドエアの各ブランドを維持しながら」連携や機能の統合を進め、「中期的な戦略としては」「ANAブランドへの統合も視野に検討を進めてまいります」としています。TRAICYは、統合を検討する際には、各ブランドが培ってきた価値や地域との関係性、安全運航への影響などを総合的に勘案する方針だと伝えています。北海道新聞は、関連記事に「名称、消えるかもしれない」という見出しを付けています(本文は会員限定のため、中身は確認できていません)。
路線やネットワークについて、Aviation Wireや乗りものニュースは、事業計画・レベニューマネジメント・調達などをまとめて国内線の収益力を高める狙いだと伝えています。読売新聞は、現時点で人員削減や地方路線の廃止・減便の予定はないと伝えています。ただし、公式発表には具体的な記述がありません。
気になるのは、同じ「ブランドを維持する」でも、2021年と2026年で書き方が違う点です。2021年は「それぞれ許可とブランドを持ち続ける」でしたが、2026年は、当面は維持しつつ、中期的にはANAブランドへの統合も視野に検討する、という書き方です。なぜ書き方が変わったのかを、公式発表は説明していません。
これから見ておく点
- 2026年12月下旬の最終契約で、株式の交換比率が決まるかどうか
- 2027年2月下旬のRPWの臨時株主総会で、承認されるかどうか
- 企業結合審査(Aviation Wireは、年末ごろをめどに公正取引委員会の承認を得る前提と伝えています)の結果
- ANAブランドへの統合について、いつ、どんな基準で判断されるのか
- 路線や運賃、マイルの扱いに変更があるのか(公式発表にはまだ具体的な記述がありません)
新しい発表があれば、このページに書き足します。
出典: ANAホールディングス 公式発表(2026年10月29日)、読売新聞、乗りものニュース、TRAICY、Aviation Wire、北海道新聞、北海道国際航空の審議会資料(2006年)、スカイネットアジア航空の審議会資料(2006年)、ソラシドエア 社名変更のお知らせ(2015年)、乗りものニュース(2021年の共同持株会社の発表)、Aviation Wire(AIRDOの社名)



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