マイナンバーカードを義務化するのは違法か?「任意」の建前が崩れつつある現状を整理する

コラム
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「マイナンバーカードの取得は任意です」――政府はこう繰り返してきました。しかし2025年12月2日の健康保険証廃止を経て、カードなしでは医療機関での手続きが複雑になりつつあります。本当に「任意」なのか、義務化は違法・違憲なのか。法的論点を整理します。

現在の状況:保険証廃止で「事実上の義務化」が進む

2025年12月2日以降、従来の健康保険証は原則廃止となりました。代わりにマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」、またはマイナカードを持たない人向けの「資格確認書」が使われています。2026年3月末には旧保険証の経過措置も終了します。

さらに2027年4月には犯罪収益移転防止法の改正により、携帯電話契約・銀行口座開設・証券口座などの非対面の本人確認が、マイナンバーカードのICチップ読み取り(JPKI方式)に原則一本化される予定です。

政府は「資格確認書を無償交付するから強制ではない」との立場を維持していますが、カードなしで生活できる場面は確実に狭まっています。

義務化が「違法・違憲」と言われる主な理由

①憲法13条(プライバシー権・自己情報コントロール権)

憲法13条の幸福追求権から導かれるプライバシー権には、「自己に関する情報を自らコントロールする権利(自己情報コントロール権)」が含まれるとされています。複数の弁護士は「マイナ保険証への一本化は、マイナンバーカードを鍵として診療情報データベースへのアクセスを可能にするものであり、これを望まない国民の自己情報コントロール権を侵害する」と主張しています。

②マイナンバー法自身の「任意原則」との矛盾

マイナンバー法は「カードの取得は任意」と定めています。ところが保険証廃止によって事実上の取得強制が生まれるとすれば、「法律の趣旨に反する政策運営ではないか」という批判が成立します。兵庫県弁護士会、愛知県弁護士会、埼玉弁護士会などは相次いで「任意取得原則に反する」との会長声明を出しています。

③憲法25条(生存権・医療アクセス権)

「マイナカードを持たない人が医療を受けるために自ら資格確認書を申請しなければならない仕組みは、生存権の一環として医療サービスを速やかに受ける権利を侵害する」という指摘もあります。高齢者施設での「利用者のマイナ保険証は預かれない」問題なども、医療アクセスの実質的な障壁として批判されています。

裁判所の立場:2023年最高裁「合憲」判決

一方、2023年3月9日に最高裁第1小法廷は、マイナンバー制度を「合憲」と判断しています(全員一致)。主なポイントは以下の通りです。

  • 番号利用は社会保障・税・災害の3分野に限定されており、目的は正当
  • 独立した監視機関(個人情報保護委員会)が設置されている
  • 「自己情報コントロール権は憲法13条上の独立した権利ではない」と判示

この最高裁判決を根拠に、政府は「合憲かつ適法」との立場を維持しています。

論点の核心:「強制ではない」は本当か

現在最も鋭く対立しているのは「資格確認書があるから強制ではない」(政府)vs「経過措置はいつでも廃止できる実質的な強制であり、任意の建前は形骸化している」(反対派)の構図です。

法学者の実原隆志教授(福岡大学)は「マイナンバー法の規律が厳格とはいいがたく、広範な政令委任は白紙委任の懸念がある」と指摘します。また、監督機関である個人情報保護委員会がカードの普及広報も兼ねており、「中立性に疑問がある」との声もあります。

「任意のまま、でも実質強制」という不明瞭な状態が続く

現状は「建前は任意、実態は事実上の強制」という曖昧な位置づけです。最高裁の合憲判決が出た以上、短期間で大きな法的転換が起きる可能性は低いでしょう。しかし弁護士会や市民団体の反対運動は続いており、特に2027年4月の犯収法改正(非対面本人確認のJPKI一本化)をめぐっては、今後さらに議論が活発化すると予想されます。

カードの取得・保管をどうするかは、最終的には個人の判断に委ねられています。メリット・デメリットを把握した上で、自分なりの答えを出すことが求められる局面です。

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