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- 2026年3月2日、米最高裁が上告受理を拒否し「AIは著作者になれない」が米国で事実上の法的確定となりました。
- AIに著作物を学習させることの合法性は別問題で、米国では「合法的に入手したデータなら原則フェアユース」という判決が出ています。
- 日本は学習段階での著作権免除が法律で広く認められている一方、生成・利用段階は既存著作物との類似性で厳しく判断されます。
「ChatGPTで書いた文章、著作権は自分にある?」「AIが描いたイラストを売っても大丈夫?」——こうした疑問を一度は抱いたことがある方も多いのではないでしょうか。
2026年3月2日、米国最高裁がひとつの重要な判断を下しました。AI著作権をめぐる長年の訴訟に、事実上の「最終的な答え」が出たのです。ただし、その答えは問題の一側面にすぎません。AIが作ったものの著作権、AIに学習させることの合法性、日本ではどうなのか——三つの論点を整理します。
「AIには著作権がない」——米最高裁が事実上の結論を出した
2026年3月2日、米国最高裁判所は Thaler v. Perlmutter 事件の上告受理を拒否しました。
この訴訟は、コンピューター科学者のスティーブン・テイラー氏が2018年に起こしたものです。テイラー氏は自身が開発したAIシステム「DABUS」が自律的に生成した絵画「A Recent Entrance to Paradise」の著作権登録を米著作権局に申請しましたが、拒否されました。理由は「人間による創作者が存在しないため」です。
テイラー氏は連邦地裁、連邦控訴裁と争いを続けましたが、いずれも敗訴。最高裁が2026年3月に上告受理を拒否したことで、司法上の手段が尽きました。これにより「AIそのものを著作者として著作権登録することはできない」という解釈が米国法の中で事実上確定しています。
米著作権局も2025年1月のレポートで「プロンプトを入力するだけでは人間の著作者性を認めない」と明記しています。ただし「人間がAI出力を編集・加工した部分」については、創作的寄与が認められれば著作権が生じうるとしています。
「AIを使って人間が作ったもの」はどうなる?
ここで注意が必要なのは、上述の判決はあくまで「AIが自律的に生成したもの」の話だという点です。
人間がAIツールを使って制作した場合は別に考える必要があります。たとえばAIが提案したラフ画を人間が大幅に加筆・修正してイラストを完成させた場合、その加筆部分には著作権が認められる可能性があります。一方、プロンプトを入力して出てきた画像をそのまま使用した場合は保護が難しい——という考え方が、現時点での主流です。
日本の文化庁も同様のスタンスをとっており、「AIを使っているかどうかより、人間の創作的な表現が実質的に含まれているかどうか」が判断基準になると説明しています。
「AIに著作物を学習させること」は違法なのか?
AIが著作権を持てるかどうかとはまた別に、「AIに著作物(本・画像など)を学習させる行為そのものが著作権侵害にあたるか」という問題があります。こちらは現在、米国で激しく争われています。
2025年6月、米連邦裁判所はAnthropicを被告とした訴訟で「合法的に入手した書籍を学習データとして使用することはフェアユース(公正利用)にあたる」と判断しました。同じ時期、Metaを被告とした訴訟でも同様の判断が下されています。ただしいずれも「海賊版データの使用はフェアユース不可」と明確に述べており、入手経路が重要な判断軸となっています。
一方、ディズニー・NBCユニバーサル・DreamWorksは2025年6月、画像生成AI「Midjourney」を著作権侵害で提訴しました。「シュレック」「ダース・ベイダー」などのキャラクターを無断で学習に使用したとして、大手映画スタジオが一斉に動いた格好です。この訴訟は現在も進行中で、フェアユースの適用範囲がどこまで認められるかが最大の争点となっています。
日本の現状——学習は「原則OK」、でも利用段階は別の話
日本の著作権法の立場は、米国とは少し構造が異なります。
学習段階については、著作権法第30条の4に「情報解析目的」での著作物利用が認められており、AI開発のためのデータ学習は原則として合法です。この規定は国際的に見ても比較的広い免除範囲で、日本がAI開発に積極的な姿勢を示す一因ともなっています。
ただし「権利者の利益を不当に害する態様」は除外されており、画像生成AIが特定のアーティストの作風を徹底的に模倣するためだけに使われるような場合には、この免除が適用されない可能性があるとされています。
生成・利用段階では話が変わります。AIが生成した文章や画像が既存の著作物と「実質的に類似」しており、かつ「依拠性」(その著作物を元に作られたこと)が認められれば、著作権侵害が成立します。人間が作ったものと同じ基準で判断されるわけです。
日本初のAI著作権訴訟——その行方に注目

2025年には、日本でも本格的なAI著作権訴訟が始まりました。
読売新聞グループ、朝日新聞、日本経済新聞の3社がAI検索サービス「Perplexity(パープレキシティ)」を東京地裁に提訴したのです。3社合計の損害賠償請求額は約66億円にのぼります。
主な主張は「robots.txtで収集を拒否していたにもかかわらず、Perplexityが記事をクロール・複製し、要約回答として表示した」というものです。これはAIに著作物を「学習させる」というよりも、リアルタイムで著作物を「複製・表示する」行為が問われており、学習段階の訴訟とは性質が異なります。
2026年3月現在、訴訟は東京地裁で審理が続いており、判決はまだ出ていません。提訴から約7か月が経過した時点では、まだ審理の初期段階にあります。この訴訟の判決は、日本においてAI検索・RAG(検索拡張生成)型サービスが著作権法上どう扱われるかの先例となる可能性があり、AI業界全体が注目しています。
「AIを使うこと」と「AIが作ること」「AIに学ばせること」——三つはそれぞれ別の法的問題です。米国での判例が積み重なるにつれ、日本の法解釈にも影響が及ぶ可能性があります。この問題は「気になるなあ」で終わらせず、自分に関係する部分だけでも押さえておくことをおすすめします。
関連リンク
- 文化庁「AIと著作権について」:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
- 米著作権局 AIページ:https://www.copyright.gov/ai/


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