腐女子文化に世界が追いついた――北米ホッケーBLドラマ『Heated Rivalry』が示すもの

コラム
当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

カナダのストリーミングサービス「Crave」制作、米国・オーストラリアではHBO Maxで配信されているドラマ『Heated Rivalry』(ヒーテッド・ライバルリー)が、2025年末から欧米で大ヒットを記録しています。そして欧米メディアがこぞって使っているキーワードが「腐女子」「BL」「ヤオイ」という日本語です。

『Heated Rivalry』とはどんな作品か

原作はカナダ人女性作家レイチェル・リードによる同名小説(2019年)。累計65万部以上を売り上げたニューヨーク・タイムズベストセラーです。

あらすじはこうです。モントリオール所属のスター選手シェーン・ホランダーと、ロシア出身・ボストン所属のスター選手イリヤ・ロザノフ。17歳の初対面から始まる8年越しの宿敵関係。リンク上では激しくぶつかり合いながら、プライベートでは互いへの感情を抑えられなくなっていく「クローゼット」同士のロマンス――。

まさに「エネミーズ to ラバーズ」という、BL界で長年不動の人気を誇るパターンです。

なぜ腐女子を引きつけたのか

IndieWireは「Heated Rivalry: Why It’s Western Yaoi and BL」という記事を掲載し、本作をBL・ヤオイ文化との文脈で論じました。The Japan Times(2026年1月31日)も「How ‘Heated Rivalry’ fits into the history of Japanese ‘boys’ love’」という記事でBL文化の歴史と接続。Bloombergの日本語版は「腐女子に世界が追い付いた、北米でBLドラマ大人気」というタイトルで特集しています。

作品がここまで女性ファンを引きつけた理由として、メディアの分析では以下が挙げられています。

  • 心理描写重視:スポーツ描写よりも内面の葛藤や言えない感情にフォーカス
  • 安全な欲望の場:異性間ロマンスで客体化されるリスクなく物語を楽しめる
  • 俳優の実際の仲の良さ:主演2人が公の場でも互いを「my baby」と呼ぶなど、リアルの関係性がファンダムを加速

大ヒットの規模:HBOで最高評価ドラマに

HBO Maxの第1シーズン最高評価ドラマになり、視聴者の大多数が女性であることをHBO自身が認めています。NHLのチケット販売が20%以上増加し、オリンピック(2026年2月・ミラノ)の聖火リレーに主演2人が参加するなど、文化的な広がりも見せています。

日本からは「未配信なのになぜか話題」

日本では現時点で公式配信はなく、視聴できない状況です。しかしXには「日本でも配信待ってます。U-NEXT?Netflixに来て!」「日本の誰かHeated Rivalryの日本語字幕版放送してください。私の頼みです」という声があふれています。英語版Kindleで原作を読む方法を解説したブログ記事も登場しています。

「腐女子的消費はゲイの文化を搾取しているか」という論争も

欧米では「腐女子的な消費は当事者(ゲイ男性)のコンテンツを搾取しているのか」という倫理論争も活発に展開されました。SalonやAutostraddle、大学の学生紙まで「是か非か」を正面から論じています。

BL文化を40年以上育ててきた日本から見ると、「欧米がこの議論をようやく始めた」という感もあります。制作者のジェイコブ・ティアニーがゲイ当事者であり、原作の非現実的な描写を「同意」を明示した描写に改訂したことで、欧米では「当事者が作ったゲイコンテンツ」と「腐女子的消費」の交差点として受け取られているようです。

日本発の文化が世界の消費の枠組みになった

1970年代に日本の女性たちが育てた「やおい」「BL」という文化が、50年後に北米のヒットドラマを通じて世界規模で議論されている。「腐女子」という日本語がそのまま英語メディアの本文に登場する現象は、文化的な逆輸入と呼べるかもしれません。

日本での配信が始まれば、また違う盛り上がりが起きそうです。今後のライセンス情報に注目です。

関連リンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました