このワダイ、3行で
- 運動会の写真をSNSに載せるときの注意点が、秋の運動会シーズンにあらためて取り上げられていて、まずいのは主に「他の子の顔」「場所が分かる手がかり」「位置情報」「一度出ると、広がったコピーは回収できない」の4つです。
- 個人が家族の写真を載せることには個人情報保護法は原則かかりませんが、写っている人の肖像権やプライバシーの話は別に残るので、「違法ではない」と「問題がない」は同じではありません。
- 位置情報の危険は2009年のブログにも指摘があり、「デジタルタトゥー」という言葉は2013年ごろに広まりました。載せる側にできることは、自分の子だけ写す、他の子と場所の手がかりを隠す、位置情報を切る、許可と園のルールを確かめる、です。
運動会の写真は、家族にとっては大事な記念です。おじいちゃん、おばあちゃんに見せたい、遠くの親戚にも送りたい、という気持ちも自然なものです。ただ、写真を「SNSに載せる」となると、見る人の数も範囲も、家族で見るときとは大きく変わります。SNSは、X、Instagram、Threadsのように、写真や文章を投稿して誰かに見てもらうネットのサービスのことです。
このページは2026年10月19日0時時点の内容です。「何がまずいのか」「どうすれば載せられるのか」を、公的機関の資料などから整理します。載せる人を責める話ではなく、「善意で載せた写真が、ほかの家の心配につながることがある」仕組みの話です。
今回、何が報じられたのか
2026年10月15日、BSS山陰放送が、秋の運動会シーズンに孫の写真をSNSに投稿して炎上するケースがある、という内容の記事をYahoo!ニュースに配信しました(配信は午前6時、最終更新は15時35分)。炎上とは、投稿に批判が集まる状態のことです。
記事が挙げている問題点は、次のとおりです。
- 自分の子や孫のつもりでも、同じ体操服の友達の顔が写り込んでしまう
- ゼッケンの名前や、学校の看板、特徴的な建物から、住んでいる地域や通っている学校が分かることがある
- 仕組みに詳しくないまま、誰でも見られる状態で載せてしまう例がある
- 一度ネットに出た画像は保存されたり広まったりして、完全には消せないおそれがある
ここで、書き分けておきたい点があります。
- 「相次ぐ」という言い方は、BSS山陰放送1社の報道です。件数や統計は、記事に示されていません。
- BSS山陰放送の記事を伝えたものは複数ありますが、別の取材による報道は、編集部が10月18日までに調べた範囲では見つかりませんでした。「報道が相次いでいる」とは書けません。
- 編集部は、この記事の全3ページを確認しました。専門家のコメントはなく、件数も示されていません。
- 見出しは「孫」「祖父母」に寄っていますが、写り込みや場所の特定は、保護者でも、同級生の家族でも、誰が載せても同じ形で起きます。
何がまずいのか。4つに分けて考える
「まずい」の中身を分けると、次の4つになります。公的機関の資料の言い方を、わかりやすく言い直しています。
1. 写り込んだ他の子の顔
自分の子だけを撮ったつもりでも、後ろや横に他の子が写ることがあります。その子の家族は、顔写真がネットに出ることを望んでいないかもしれません。載せたかどうかを、本人や家族は後から知ることになります。
2. 顔以外から分かること
顔にぼかしを入れても、場所は分かることがあります。総務省の「安心・安全なインターネット利用ガイド」は、写ったものから撮影場所が特定されることがあり、背景などから居場所が分かってしまうこともある、と注意しています。複数の投稿を組み合わせると、住んでいる地域が分かることもある、とも説明しています。運動会なら、ゼッケン、体操服、園舎や校舎、看板、投稿文などが手がかりになりえます。
3. 位置情報
スマートフォンのカメラは、設定によっては、写真のデータの中に「どこで撮ったか」を記録します。Appleの公式ガイドは、カメラの位置情報サービスをオンにすると写真や動画に撮影場所が記録され、共有された相手が撮影場所を知れる場合がある、と説明しています。岩見沢市教育委員会(北海道)の保護者向けリーフレットも、位置情報設定をオンにして撮影すると、居場所を特定される可能性がある、と書いています。
では、SNSに載せるときに、サービス側が位置情報を消してくれるのか。X、Instagram、Facebookについて、「アップロード時に位置情報を消す」と公式のヘルプで明言しているページは、編集部の調べでは確認できませんでした。確認できていないので、「SNSが消してくれるから大丈夫」とは書けません。自分で切るのが確実です(やり方は後の章に書きます)。
なお、位置情報を切っても、背景や制服から場所が分かることはあります。位置情報は、特定の手がかりの一部です。
4. 一度出ると、広がったコピーは回収できない
個人情報保護委員会の啓発資料は、一度投稿した情報を完全に消すのはとても難しい、と説明しています。公開範囲を絞っても、止められないことがあります。Xの公式ヘルプは、非公開ポストについて「フォロワーはあなたのポストの画像をキャプチャしたり、共有したりできますのでご注意ください」と案内しています。
つまり、サービス上の投稿は消せることがあっても、すでに誰かが保存したり、転載したりしたコピーまでは、投稿した本人でも回収できません。ここが、「載せる前に考えたい」と言われる、いちばん大きな理由です。
法律では、どう考えるのか
「法律に違反するのか」は、気になるところだと思います。結論から言うと、「違反とも、問題なしとも、運動会の写真については言い切れない」です。理由を、2つに分けて説明します。
個人情報保護法は、個人の投稿には原則かからない
個人情報保護法は、会社や団体などの「事業者」が守る義務を決めた法律です。個人情報保護委員会のFAQ(Q2-3)には、こう書かれています。
「個人情報保護法は,事業者に関して遵守すべき義務(第4章)を定めていますが,個人情報取扱事業者に該当しない個人については,個人情報保護法は適用されず,個人情報保護法に基づく義務を負いません。」
祖父母や保護者が、家族や友人の写真を個人として載せる場合は、この法律の義務の対象にはならない、ということです。園や学校、PTAなどが行事の写真を扱う場合のルールは、また別です。このページでは、そちらには立ち入りません。
でも、肖像権やプライバシーの話は別に残る
肖像権は、自分の顔や姿を勝手に撮られたり、公表されたりしない利益のことです。総務省のサイトは、肖像権は有名人に限らず誰にでも認められる権利で、ネットやSNSに公開するときは写っている人の許諾が必要になる場合がある、と説明しています。北九州市教育委員会の資料には、本人の承諾なしに他人が写った写真を投稿すると肖像権の侵害となり、損害賠償を請求されたケースもある、という記述があります。
裁判所の考え方としては、2005年(平成17年)11月10日の最高裁判決があります。ただし、この判決は、刑事事件の被疑者・被告人を法廷で隠し撮りした写真とイラストを雑誌に載せた件で、運動会の判決ではありません。ここでは「原則だけを借りる」形で紹介します。判決は、こう述べています。
「人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」
そして、撮影が違法になるかどうかは、撮られた人の社会的地位、活動の内容、場所、目的、撮り方、必要性などを総合して、「社会生活上受忍の限度を超えるか」で決める、としています。一律にダメでも、一律にOKでもなく、場面ごとの判断になるということです。ここから、「運動会で他の子が写り込んだ写真は違法だ」あるいは「適法だ」とは言えません。個別の判断になります。
弁護士の解説(まいどなニュース、2026年5月15日、島田さくら弁護士)は、他の子が写った写真の無断投稿は肖像権侵害になる可能性がある、としています。後ろ姿や遠くに小さく写る程度なら問題になる可能性は低いが、服や持ち物、背景、投稿文から特定される場合もある、とも述べています。これは弁護士個人の見解として紹介します。
昔から言われてきたこと
「写真を載せる心配」は、運動会の季節に初めて出てきた話ではありません。ネット上で、年を追って言われてきたことを、日付つきで並べます。
| 年 | 出来事 | 確かさ |
|---|---|---|
| 2009年9月28日 | ITmediaのブログで、iPhoneで位置情報の利用をオンにすると写真に緯度と経度が入り、ブログに載せると自宅の場所が公開されうる、という指摘 | 報道(ITmedia オルタナティブ・ブログ) |
| 2013年2月 | 米国のTED2013で、フアン・エンリケス氏が講演「Your online life, permanent as a tattoo(ネット上の生活は入れ墨のように消えない)」 | 公式(TED) |
| 2013年8月13日 | ダイヤモンド・オンラインが「デジタル・タトゥー」の問題を紹介。2013年2月のTEDでエンリケス氏が示した言葉だと書く | 報道(ダイヤモンド・オンライン) |
| 2014年9月28日 | J-CASTが、子どもの顔写真や位置情報から個人が特定されるおそれを取り上げる。数人の親への取材で、位置情報の公開に敏感な声が紹介された | 報道(J-CAST) |
| 2015年4月27日 | IPA(情報処理推進機構)が、行楽写真の投稿時のプライバシー漏えいに注意するよう呼びかけ。GPS情報つきの写真から、自宅の住所や子どもの通う学校が分かる可能性がある、公開範囲を指定しても閲覧者は写真を保存・再公開できる、などと説明 | 報道(Impress Watch経由。IPA原文は未確認) |
「デジタルタトゥー」は、一度ネットに出た情報が入れ墨のように消えない、ということを表す言葉で、日本では2013年ごろに広まったとみられます。ただし、日本語での最初の使用や、言葉を作った人がだれかは、確認できていません。
おもしろいのが、2009年のブログの指摘も、2015年のIPAの呼びかけも、今回の記事とほとんど同じことを言っている点です。位置情報、場所の特定、公開範囲を絞っても残る、という心配は、スマホで撮った写真をネットに載せる習慣が広がった頃から、ずっと繰り返されてきました。それが今回のように、あらためて話題になることがある、ということです。
「ネットに出した情報は、本当に一生残るのか」は、実はもう少し複雑な話です。サービス上の投稿は消えることがありますが、すでに保存されたり転載されたりしたコピーは残りうる、というのが、このページでの整理です。サービスが終わると置き場所ごと見られなくなる物がある一方で、広がったコピーは回収できない。その両面は、『ジオシティーズ』や『Flash』はなぜ見られなくなった? ネットは一生残るのかを整理にまとめています。
どうすれば載せられるのか
公的機関の資料(個人情報保護委員会、総務省、自治体、IPA)で、おおむね共通している考え方は、次のとおりです。
- 自分の子だけが写る写真を選ぶ。他の子が写るなら、顔にスタンプやぼかしをかける。個人情報保護委員会の啓発マンガ、IPA、岡山県の教材などが、同じ方向の書き方をしています。
- 顔以外の手がかりを入れない。ゼッケンの名前、園や学校の看板、特徴的な建物、制服や体操服の名前。後ろ姿でも、服や背景で分かることがある、と弁護士の解説は指摘しています。
- 位置情報を切る。後の「iPhoneの場合」を見てください。
- 公開範囲を絞る。ただし、それで安心しない。Instagramは、アカウントを非公開にすると、承認した利用者だけがフォローでき、写真や動画を見られるのもフォロワーに限られます。Xの非公開設定も同じ方向です。ただ、前の章のとおり、見られる人が保存したり共有したりすることまでは止められません。
- 写っている子の保護者に許可をとる。園や学校のルールを確かめる。個人情報保護委員会、IPA、総務省は、写っている人の許可を得ることを挙げています。弁護士の解説は、撮影してよいかと、投稿してよいかは別の話で、学校によっては「家族で楽しむ範囲のみ」と決めている例がある、と紹介しています。
iPhoneの場合(Apple公式ガイドに基づく)
手順は、Appleの公式ガイド(日本語版)で確認しました。画面の表記は、機種やOSのバージョンで少し違う場合があります。
- 共有するときだけ外す: 写真を共有する画面で「オプション」を開き、「位置情報」をオフにします。オフにすると、共有する写真に位置情報は含まれなくなります。
- 撮影時から記録しない: 「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「位置情報サービス」→「カメラ」で、「しない」を選びます。
- 撮影済みの写真から消す: 写真の「その他」ボタンから「情報を調整」→「位置情報を調整」を開き、「位置情報なし」にします。
Androidの場合は、端末やアプリごとに手順が違い、このページでは公式の手順を確認できていません。お使いの機種のヘルプで確かめてください。
家族にだけ見せたいなら
祖父母や親戚に見せたいだけなら、SNSに投稿するより、限られた相手だけに送る方法のほうが、広がる範囲が小さくなります。ただし、どのサービスにどんな機能があるかは、このページでは公式ヘルプで確認していません。使うサービスの説明を読んでください。
載せないでほしい側と、残したい側
載せないでほしい側から見ると、自分の子の顔や、通っている園や学校の場所が、知らない人に見られる心配があります。一方で、載せたい側から見ると、成長の記念を家族や友人と分かち合いたい、という気持ちがあります。どちらも、子どもを大事に思う気持ちから出ています。ぶつかるのは、気持ちの強さではなく、「見られる範囲」の想像が人によって違うからです。
家族にやんわり伝えるときの一言
身内が公開で載せていて、気になったときは、強い言葉を避けるのが基本だと、弁護士の解説も述べています。たとえば、次のような言い方があります(このページでの例文です)。
「かわいく撮れてるね。ほかの子の顔が写っているところだけ、スタンプで隠してもらえる?」
もし載ってしまった後は、まず投稿した人に丁寧に連絡する、応じてもらえなければ、サービスの運営への削除申請、という順番が、弁護士の解説では紹介されています。
まだ分かっていないこと
2026年10月19日0時時点で、確認できていないことは次のとおりです。
- 運動会の写真をめぐる炎上が、実際にどれくらいあるのか(BSS山陰放送の記事には件数がなく、別の取材による同種の報道も見つかっていません)
- X、Instagram、Facebookが、アップロード時に位置情報を消すのかどうか(公式のヘルプで確認できていません)
- Androidの公式な手順
- 国の機関が、「運動会の写真のSNS投稿」を直接扱った公式のガイドを出しているのか(検索の範囲では見つかっていません)
- 園や学校、PTAが、行事の写真を扱うときにどのルールが当てはまるのか
写真に写る人の気持ちも、載せる人の気持ちも、どちらも本物です。「載せてよいか」の線は、法律だけでは引ききれず、写る人たちの間で、ひとこと確かめ合うところで決まる部分が大きいと、私は思います。
関連ワダイ
『ジオシティーズ』や『Flash』はなぜ見られなくなった? ネットは一生残るのかを整理:サービスが終わると置き場所ごと見られなくなる物がある一方で、広がったコピーは回収できない。その両面を整理したページです。運動会の写真は、後者の身近な例にあたります。
出典
- BSS山陰放送(2026年10月15日6時配信、15時35分更新、Yahoo!ニュース掲載。全3ページを確認。専門家のコメントはなく、件数も示されていない):記事
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法 FAQ(個人の方向け)」Q2-3:FAQ
- 個人情報保護委員会 啓発マンガ「ここに気をつけよう!個人情報『SNSへの投稿』」:ページ
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年11月10日判決(平成15年(受)第281号):裁判所ウェブサイト
- 総務省「国民のための情報セキュリティサイト」肖像権:ページ
- 総務省「上手にネットと付き合おう!安心・安全なインターネット利用ガイド」事例:ページ
- 岩見沢市教育委員会 保護者向け啓発リーフレット No.10(令和7年5月):PDF
- 北九州市教育委員会「ネットトラブル等防止用啓発資料 No.6」(令和6年度):PDF
- 岡山県 消費者教育教材(肖像権):PDF
- まいどなニュース(2026年5月15日、島田さくら弁護士の解説、Yahoo!ニュース掲載):記事
- Apple「写真の位置情報メタデータを停止または削除する」(日本語版・パーソナルセーフティユーザガイド):ガイド
- X ヘルプ「公開ポストと非公開ポスト」(2026年10月18日に確認):ヘルプ
- Instagram ヘルプ「公開アカウントと非公開アカウントの違い」:ヘルプ
- ITmedia オルタナティブ・ブログ(2009年9月28日):記事
- TED「Your online life, permanent as a tattoo」(2013年2月):講演ページ
- ダイヤモンド・オンライン(2013年8月13日):記事
- J-CAST(2014年9月28日):記事
- Impress Watch INTERNET Watch(2015年4月27日、IPAの呼びかけを報じた記事):記事
更新履歴
- 2026年10月19日:初版(10月19日0時時点の情報)
- 2026年10月19日:独立チェックの指摘を反映(出典の差し替え、報道の確認状況の更新、関連ワダイのリンク化)



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